「社会」の定義
独社会学者フェルディナント・テンニース(1855-1936)による定義。Wikipediaより要約。
ゲゼルシャフト(Gesellschaft)
近代国家や企業・大都市のように利害関係に基づいて人為的に作られた社会のこと。
・中央集権社会(近代国家)
・資本主義社会
・階層型社会(企業)
ゲマインシャフト
地縁、血縁、友情などにより自然発生した有機的な社会集団のこと。英語ではCommunity(コミュニティ)に相当する。
・自律分散社会
・社会的ネットワーク(ソーシャルネットワーク)
・NPO
・コミュニティ・サークル
時代回帰
利害関係の社会のみだと、ストレスや疲れが生じる。19-20世紀は資本主義の世紀だとすれば、利害関係の社会(ゲゼルシャフト)だった。21世紀、社会的ネットワーク(ソーシャルネットワーク)の普及により、自然発生的な有機的な社会(ゲマインシャフト)へ回帰しようとしている。
「社会の歴史的変遷」を参照(2013.08.30追記)
日本語としての「社会」
江戸時代末期から使われるようになった。明治時代には、英:Societyの翻訳語となった。
「社会」以前
「社会」という言葉が成立する前に、日本語に存在したと思われる同義の言葉:
・世間
・惣村
・寄合
・祭り(まつり)
・講(こう)
個人的解釈
「社」とは「やしろ」である。だから「社会」とは「やしろで会うこと」ということになる。
「神社」とは、「神」を祀った「やしろ」だが、日本人にとって、神とは自然、あるいは、自然の恵みそのものだった。「神社」とは、豊穣を祈り、収穫を祝う(祭り)ために、人々が集まる場所だった。これがつまり「社会」ではないだろうか?
ソーシャル?
2011年、「ソーシャル」という言葉が多用された年はない。「ソーシャル」を新しい時代の波を表すとキーワードには、賛同できない。「社会的」の英語であると理解すれば、上述のとおり、新しいキーワードでもなんでもなく、時代回帰が起きていることが分かるだろう。
教育科目としての「社会」
・「歴史」
・「地理」
・「社会学」(社会科教育)
・「政治」
・「経済」
関連書籍
読書している分野で、歴史、地理、政治、経済を除いても「社会」の分野が多い。
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読書記録の「社会」タグ
『ネクスト・ソサエティ』
― 歴史が見たことのない未来がはじまる
現代のさまざまな社会問題を解決するのは、ゲゼルシャフトである政府や企業ではなく、ゲマインシャフトであるNPOだと結論付けている。ゲマインシャフトによる人間性の回復が、本書テーマである。
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『イノベーターの条件』
―社会の絆をいかに創造するか (はじめて読むドラッカー (社会編))
一般的に、ルソーは啓蒙思想の大家であり、社会の形成に寄与したと言われるが、ピーター・ドラッカーは、理性主義こそが、社会主義、そして全体主義(国家社会主義=ファシズム)を生み出したと断罪している。ゲゼルシャフト、ゲマインシャフトの理解を深めると、理性主義=ゲゼルシャフトの原理ということが分かる。なるほど、理性のみではより良い社会は創れない。社会の回復には、より人間的、自然発生的な要素=ゲマインシャフト的な要素が必要ということだろう。
社会は、一人ひとりの人間に「位置づけ」と「役割」を与え、そこにある権力が「正統性」をもつとき、はじめて機能する。個人の位置づけと役割は、社会の枠組みすなわち社会の目的と意味を規定する。権力の正統性は、その枠組みのなかの空間を規定する。すなわち社会を制度化し諸所の機関を生み出す。
出典:『イノベーターの条件』
原出典:『産業人の未来』(1942年)
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『ヒトデはクモよりなぜ強い』
21世紀はリーダーなき組織が勝つ
クモは中央集権社会=ゲゼルシャフトの象徴であり、ヒトデは自律分散社会=ゲマインシャフトの象徴である。
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『社会とは何か』
―システムからプロセスへ (中公新書)
「社会」という概念の変遷を網羅的に理解するのに役立つ。
編集履歴
・2013.07.24 『イノベーターの条件』の追記
・2012.02.04 日本語としての「社会」、教育科目としての「社会」、関連書籍
・2010.08.28 初版、ゲゼルシャフトとゲマインシャフト