中世
定義
古代と近代のあいだの時代。
ヨーロッパ史では西ローマ滅亡後、ルネサンス、あるいは宗教改革まで。
封建制、ローマカトリック(およびギリシア正教)の支配する時代。
暗黒時代
古代の文明が滅んだあと文明が復興するまでの「暗黒時代」と言われるが、近代とは異なる価値観を持つ時代と思ったほうが真実に近い(対して、古代は近代に近い価値観を持っている)。
中世の支配的な価値観
物質的な欲望を悪いことと考える道徳と宗教的、精神的な満足を得ることを評価する美意識を持っている。対して、古代と近代では、物質的な欲望を持つことは、それ自体では悪いこととはみなされないし、過度に宗教的、精神的な満足にこだわることに否定的な価値観を持っている。
道徳とは最適な戦略を見出すためのヒューリスティックであるという立場からすると、物質的に貧しい時代が続き、物質的な満足を目指す戦略がコストパフォーマンスが悪い状態が続いたため、物質的欲望を卑下する道徳が支配的になったものと思われる。代わって、資源や財産を消費せずに、「信仰」によって主観的な満足を得る戦略が支配的になったのであろう。
循環的な時間
中世では、物質的な経済や社会が単線的に発展するというのではなく、最後の審判まで(あるいは永遠に)現在の社会が維持されると考える歴史観が支配的である。また、物質的なものに関心を持つことに否定的であったため、物質の観察による「科学」は低迷した。
ヨーロッパ以外の世界での中世
ユーラシア大陸全体の歴史としては、「遊牧民とイスラム教の時代」という言い方のほうが実情に近い。
中国史では、ヨーロッパにおける中世のような経済や科学が完全に停滞した時代(同時に精神的価値を極度に重んじた時代)がこれほど連続して起こってはいない。
あえて類似した社会状況の時代を挙げるならば、後漢末~唐初と明末~清代の2時代を「中世的」と指摘することができる。間に挿まれた宋~元代は、中世的とは言いがたい。これは、江南の開発が進み相対的に豊かな時代であったためである。