知識伝播速度
人類史上、4度の知識革命があった(詳細は「知識革命」参照)。
知識革命のたびに、「知識伝播速度」は幾何級数的に飛躍した。
モード
同期(×)・非同期(○)
・同期:知識の発信者と知識の受信者が同じ時間を共有し、発信と受信が同時に行われる。
・非同期:知識が時間を超越して伝播する。発信者と受信者は必ずしも同じ時間を共有する必要がない。
同一空間(×)・異空間(○)
・同一空間:知識の発信者と知識の受信者が同じ空間を共有する。発信と受信は同一場所で行われる。
・異空間:知識が空間を超越して伝播する。発信者と受信者は必ずしも同一場所にいる必要がない。
注)制約の多い同期・同一空間を×、制約の少ない非同期・異空間を○としてシンボル化した。
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時間・空間を組み合わせると4パターンになる。
同期&同一空間(××)
・発信者と受信者が同じ時間・同じ場所に居合わせることによってのみ知識が伝播する。
非同期&同一空間(○×)
・発信者が発信した場所に受信者が後から訪れることによって知識が伝播する。
同期&異空間(×○)
・リモートでありながら、発信者と受信者が時間を共有することによって、知識が伝播する。
非同期&異空間(○○)
・発信者と受信者が時間も場所も共有していないのに、知識が伝播する。
文明以前
媒体=口頭伝承
・モード:同期&同一空間(××)
・伝播範囲:家族・集落・部族内のみである(10)
・伝播速度:1(1件1件口頭で伝える)
媒体=壁画
・モード:非同期&同一空間(○×)
・伝播範囲:子孫(10)
・伝播速度:1
現代より人口密度が希薄であった文明以前において、他部族の壁画を発見し、知識を継承することは稀であったのではないか?仮に伝播範囲は10人としておく。
第一次知識革命:人類史上初の百万人都市
・時期=紀元前後の西洋と中国
媒体=紙・手書き模写
・モード:非同期&非同一空間(○△)
・伝播範囲:都市内(100)
・伝播速度:1
持ち運びが可能と言っても、複製には大変手間がかかり、手書き模写の本は大変貴重で、都市から持ち運び出すことが困難であった。仮に100人が同じ本を読んだとする。
しかしそれでも、時間を超越しながら多数の知識人を輩出した。人類史上、初めて知識が体系化された。
第二次知識革命:印刷革命
・時期=15世紀~16世紀
媒体=大量印刷された本
・モード:非同期&非同一空間(○○)
・伝播範囲:ヨーロッパ全体(10000)
・伝播速度:1
知識の大量複製が可能になり、持ち運びが可能になった。印刷部数が分からないが仮に10000冊刷られて10000人が読んだと仮定する。
知識の大量拡散により、16世紀から18世紀の間に、宗教改革・新大陸への移民・産業革命が引き起こされた。
第三次知識革命:通信革命・コミュニケーション革命
・時期:19世紀末~20世紀
媒体=電話
・モード:同期&非同一空間(×○)
・伝播範囲:全世界(1対1)
・伝播速度:∞(リアルタイムでなければならない)
遠方に知識を伝播する場合、紙媒体では知識の輸送時間がかかったが、電話は、知識伝播時間をゼロにした。
媒体=ラジオ&テレビ
・モード:同期&非同一空間(×○)
・伝播範囲:1対10,000,000(日本国内の場合)
・伝播速度:1000
電話では1対1の伝播だったのが、ラジオ&テレビでは、伝播先が限りなく無限大に広がった。20世紀後半、録音・録画技術の登場により、非同期&非同一空間モード(○○)も可能になった。日本国内で視聴率を10%と想定すると、伝播範囲は約1000万人である。
伝播速度は、編集時間を要するため、電話やインターネットのように、ほとんどの場合、リアルタイムではない。
第四次知識革命:IT革命(狭義知識革命)
・時期:1995年~現在
媒体=インターネット
・モード:非同期&非同一空間(○○)
・伝播範囲:全世界(1000,000,000対1000,000,000)
・伝播速度:∞(リアルタイムが可能)
ラジオ&テレビでは、発信者と受信者の関係が1対Nであった。インターネットではN対Nである。2010年現在、世界のインターネット人口は10億人前後と推定される。伝播範囲は10億人である。
伝播速度はゼロも可能だが、非同期も可能。媒体によって異なる。
まとめ
モード/伝播範囲/伝播速度
文明以前
××か○×/家族・集落・部族内・子孫(10)/1
人類史上初の百万人都市
○△/都市内(100)/1
印刷革命
○○/ヨーロッパ全体(10000)/1
電話
×○/全世界(1対1)/∞(リアルタイムでなければならない)
ラジオ&テレビ
×○/1対10,000,000/1000
インターネット
○○/1000,000,000対1000,000,000/∞(リアルタイムが可能)