EGMサミット
8月24日、かねがねうわさを聞いていたEGMサミットに参加した。当日は浜松から上京し、いくつかの打ち合わせをこなした後であり、時間が間に合わす昼食抜きでの参加となった。そのため思考も半分回っていない状況だったのであまり発言もできなかったことが、個人的に悔やまれる。
ところで今回のイベントを通じてSNSに関して思いのまとまったことがあるので、それをメモ書きとして残すこととした。
SNSが目的になってしまう落とし穴
今回のイベントでは少なかったのだが、時々SNSが目的となってしまうケースがある。つまり「目標達成のツールとしてのSNS」ではなく、「SNSを普及させるための方法論」の議論である。来場者の中にも職場でそのような状況となっている方がいた。また目標自体があいまいな状況でSNSを使っているケースがあるのも事実である。ビジネスでSNSを用いる場合、今現在はレピュテーション・マーケティングの1つのツールであるため、明確な施策目的からのブレークダウンが不可欠である。
組織内でのSNSの普及
企業などの組織でSNSを普及させようとしてもそう簡単にはいかない。企業の社長やCIOに聞いてみても、TwitterでTweetするのは3%ぐらいで、残りは聞き流すだけか、見ない人とのことだ。10%が使いこなす企業は極めて特殊である。SNSは極めて新しい伝達手段なので、使い方のガイドラインが文化の領域まで発達していないことが大きな要因であると考える。従って様々な使い方を試し、成功や失敗などの「経験」を通じて使い方のガイドラインを発見することが不可欠と考える。
SNSと営利活動
企業は営利団体であるため、全ての活動は営利との結びつきが求められる。結びつきの強いと判断されることは率先して実行に移る一方、弱いことは後回しになる。
社外とのSNSでの結びつきは、レピュテーションなどの活動による売上拡大や、ユーザ同士の互助によるサポートによる企業活動を補完する要素がある。しかしこの段階でSNSは企業組織の一部になるため、明確なマネジメントの責務が発生するにもかかわらず、その整備をしない例が散見される。以前BBSでのフォーラム運営をしていた際にも、円滑にするためには相応のマネジメントは発生したことを考えても、SNSでも同様のことが発生すると考える。
社内SNSは更に難しい。新しいビジネスを生み出す場、としても、社内での情報交換の活性化、としても、これだけでは本格導入の投資判断をするには決定打に欠ける。今回この議論が少なかったのは残念だ。
ところで企業活動における双方向コミュニケーションは当たり前のように昔から行われている。例えばHPの「ドーナッツテーブル」があり、京セラのアメーバ組織、P&Gやサムソンのグローバルでの情報交換の仕組みがあり、SHARPでの社長直下プロジェクト、小林製薬での製品開発プロセス、最近ではIBMも事例となりつつある。一方でQuantaやFlextronix等のEMS企業では情報の流れが一方こうのため、双方向コミュニケーションである必要性はあまりない。
つまりSNSだけでなく、企業内での双方向コミュニケーションの重要性は、その企業のドクトリンがプロセス重視か柔軟性重視かによるところが大きい。また柔軟性重視としても、将来に向けた投資を行うための意思決定プロセスが構築されており、その上で事業プロセス、組織形態、人事考課が組みあがっていることが前提条件となる。そもそもこれらができている企業においては、SNSは加速させるための要因でしかないため第一儀ではない。またできていない企業にとっては、先の要素の整備が先行して必要となる。
一方でもう1つの社内におけるSNSの活用法としては、ストリームデータベースとしての利用法である。企業活動におけるデータの中で、公式に構築されているデータベースに蓄積できないデータを「とりあえず放り込む先」としてSNSを用いる方法である。但しこの場合にはその情報のセキュリティ性を以下に担保するかが課題となる。また再利用可能に有用な情報を再構築するシステムの存在も不可欠である。この場合SNSは単に構築するだけでなく、SNSを用いたアプリを生み出し続けるプロジェクトが同時多発的に進行し続ける必要があるため、投資が永遠に続く。
いずれにせよ社内SNSは、現在のところ明確に投資であるとの意思決定がない限り、企業として選択しにくいといえる。
SNSがあれば従業員が活性化するとは限らない
今年の年頭に、元ザッポスのCEOとHCLのCEOの対談があった。いずれも社員に活気がある企業だ。ではこれらの企業では何が重要視されているか。HCLでは2006年から"Employees First, Customers Second"としている。「お客様は神様です」の日本から見るととんでもない話である。その点はともかくとして、彼らに共通することは、社員が「今日は会社で何をしようか」と思いを巡らせて出社することを実現した点である。ザッポスでは楽しくすることで実現する一方、HCLでは多少責任的な発想で実現するなど方法論は違うが、社員が自発的に活動することを事業の成長につなげているのである。この点はGEやIBMも同じといえる。つまり従業員に活力を与えるのはマネジメントの力であり、SNSはツールの1つなのである。(但しツールとしての洗練は必要である)
SNSとInternet検索やマスメディアの違い
個人にとって今までのInternet検索やマスメディアは、いわゆる知識の獲得が目的であった。だから企業は広告費、宣伝費を投じ、PR活動に活用してきたのである。
これに対し、SNSとは経験の獲得が目的である。まだ現在は文字や映像など限られた伝達手段しかないが、情報を受け取り、咀嚼した反応を情報と同レベルで返すことができる。場合によっては複数の経験をまとめて新たな情報を生み出すこともできるため、創造の連鎖的拡大も可能だ。当然ながら経験の面に着目したサービスも面白いテーマである。
そう考えた場合、企業だけでなくあらゆる組織でSNSをどう扱うかの議論はあまりにも広いテーマであり、今後の展開が極めて楽しみである。
SNS同士の違いとは何か
例えばFacebookはLinkedInはTwitterのTweetをタイムラインに反映できるが逆はない。またFacebookとLinkedIn、Google+の間での共通性もない。この辺りから見るとTwitterとFacebook、LinkedIn、Google+のグループは異なるSNSといえる。だが本質的な違いが不明確なので、様々な活動を通じて調べてみたい。