2006年1月18日(第3次小泉内閣)発表。
2001年1月発表のeJapan戦略と2003年発表のeJapan戦略Ⅱを引き継ぐものとして策定され、2009年のiJapan戦略2015に引き継がれた。
eJapan戦略がIT普及を主要な目標にしているのに対し、ITを構造改革の推進のために利用するという方向性が鮮明となった。
いわば、小泉改革色が強いものとなっている。
IT新改革戦略目的より
「改革には抵抗が伴う。その抵抗にひるむことなく我が国の21世紀を切り開いていくことが必要である。」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kette...
医療ITに関する記述も大幅に増え、eJapan戦略、eJapan戦略Ⅱと異なり、レセプトオンライン化などと並んで、EHRに関する記述が登場する。
IT新改革戦略、ITによる医療の構造改革
-レセプト完全オンライン化、生涯を通じた自らの健康管理-
より
現状と課題
e-Japan 戦略Ⅱの策定以降、医療分野の情報化については先導的7分野の一つとして重点的に取り組んできたところであるが、情報化の状況は未だ低いレベルに止まっている。
例えば、レセプトのほとんどは紙で処理されているため、医療保険事務の高コスト化を招くとともに、予防医療等へのレセプトデータの活用が十分になされていない。また、電子カルテについては、医療安全の確保や医療機関間の連携等に有効であるが、普及が進んでいない状況にある。
そのため、個人情報保護及びセキュリティに配慮しつつ、導入コストの低減や奨励策の活用等により、情報化を積極的に進めていく必要がある。
今後更に国民医療費の急速な伸びが予想される中、疾病の予防、医療の質の向上と効率化、医療費の適正化を図ることが緊急の課題となっている。こうした課題の解決に向け、ITの構造改革力を最大限に発揮することが必要不可欠となっている。
目標
1.遅くとも2011年度当初までに、レセプトの完全オンライン化により医療保険事務のコストを大幅に削減するとともに、レセプトのデータベース化とその疫学的活用により予防医療等を推進し、国民医療費を適正化する。
2.2010 年度までに個人の健康情報を「生涯を通じて」活用できる基盤を作り、国民が自らの健康状態を把握し、健康の増進に努めることを支援する。
3.遠隔医療を推進し、高度な医療を含め地域における医療水準の格差を解消するとともに、地上デジタルテレビ放送等を活用し、救急時の効果的な患者指導・相談への対応を実現する。
4.導入目的を明確化した上で、電子カルテ等の医療情報システムの普及を推進し、医療の質の向上、医療安全の確保、医療機関間の連携等を飛躍的に促進する。
5.医療・健康・介護・福祉分野全般にわたり有機的かつ効果的に情報化を推進する。
実現に向けた方策
(中略)
個人が生涯を通じて健康情報を活用できる基盤づくり
1.生涯にわたる健診結果を電子データとして継続的に収集し、適切に管理するための仕組み(収集すべき健診項目、標準的なデータ形式、管理運営方法等)を2007 年度までに確立する。
2.電子データとして収集される健診結果等の健康情報を個人、保険者等が活用するための基盤(健康情報を管理するデータベース、IC カードを活用した個人による自らの健康情報への参照機能等)の整備を2008 年度までに開始し、2010 年度までにその普及を推進する。
3.疾病予防の推進等に向け、収集された健康情報の活用方策を2010 年度までに確立する。
医療におけるより効果的なコミュニケーションの実現
1.山間僻地・離島等の地域における遠隔医療サービスを更に推進するため、2010 年度までに、遠隔医療技術の適用対象疾患等の応用範囲を拡大するとともに、利用環境の整備を促進する。
2.地上デジタルテレビ放送等を活用した双方向サービス及びIC カードの利用により、救急車依頼時の応急処置の指導等や、小児救急医療のための相談窓口の開設等の、受診前医療サービスを行うため、2007 年度までに実証実験を行い、2010 年度までに全国的な実用化を図る。
医療情報化インフラの整備
1.医療機関の機能、規模、特性等を考慮して、目的に応じた情報化の必要性と活用度を適切に
評価するための指標を2007 年度までに開発する。
2.統合系医療情報システム(オーダリングシステム、統合的電子カルテ等)を200 床以上の医療機関のほとんどに導入し、業務の効率化、医療安全および診療情報の提供を実現する(400床以上は2008 年度まで、400 床未満は2010 年度まで)。
3.統合系医療情報システム導入の費用対効果に乏しい小規模な医療機関に対しては、低コストで診療情報連携に適した電子カルテ等を用いて、2010 年度までに面的な医療連携を図る。
4.医療機関間の診療情報連携、マルチベンダー化によるシステム導入コストの低減を実現するため、システムベンダーは標準的なデータフォーマット及びデータ交換規約の医療情報システムへの標準搭載を2006 年度より開始する。
5.医療機関等におけるより高度な医療安全や業務の効率化を実現するため、2010 年度までに電子タグ等のユビキタスネット関連技術の活用を推進する。
6.厳格な本人確認を行いつつ診療情報等の安全な交換や参照を実現するため、HPKI(Healthcare Public Key Infrastructure:保健医療福祉分野の公開鍵基盤)、安全で安心なネットワーク基盤等を2008 年度までに整備する。
7.円滑な情報化を支援する助言・指導等を通じて医療情報化インフラの利用価値を高める医療機関CIO の在り方について検討し、2008 年度までに人材育成の体制を整備する。
情報化推進体制の整備と情報化グランドデザインの策定
1.医療・健康・介護・福祉分野全般にわたるIT政策を統括する体制を2005 年度までに整備するとともに、分野横断的な情報化方針、具体的なアクションプラン等を示す情報化のグランドデザインを2006 年度までに策定する。
評価指標
1.①レセプトのオンライン化率、②医療機関・審査支払機関・保険者での事務経費削減額
2.健診項目及び電子データ形式の標準化状況
3.地上デジタルテレビ放送等を活用した受診前医療サービスの実施箇所数
4.①統合系医療情報システムの普及率、②「(医療情報インフラの整備)1.」に示される指標
5.①医療・健康・介護・福祉分野全般にわたる統括的なIT政策推進体制の整備状況、②医療・健康・介護・福祉分野全般にわたる情報化グランドデザインの策定状況