草案第1話「株式家庭」
僕の名前は村上健太。
2982年生まれの26歳。
新卒で「株式家庭ニシムラ」という家庭に入ってから
かれこれ3年が経つ。
昔の人は「株式会社」なんてものを作ってみんなで生産活動していたらしい。
1人や2人じゃ本格的な生産活動なんてできなかったんだ。
だけど、今ではあらゆるコストが削減されて
その気にさえなれば
どんな生産活動もできる。
食べるものはもちろん、服だろうが家だろうが、
コンピュータの指示に従えば
どんなものでも簡単に出来上がってしまう。
株式会社なんてものはもう必要ないんだ。
一方で、「円満な家庭を作ること」というのは
どれだけ技術が進歩しても難しい。
いや、むしろ技術が進歩すればするほど難しくなっている気がする。
2602年。
「最高に円満な家庭を作りたい」と思うオランダ人達がお金を出し合い、
そのお金で「東インド家庭」というものを設立した。
これが世界初の「株式家庭」というものだ。
これが大成功して
株式家庭が次々と出現した。
未だに普通の家庭もあるけど、
ほとんどの家庭が株式方式をとっている。
完全にピラミッド型になっていて
家庭員は家庭部長に従い、
家庭部長は家庭長に従う。
家庭長は株主に従うといった感じだ。
今ではほとんどの学生が
何の迷いもなく株式家庭に就家する。
僕もその中の1人だ。
次回第2話「就家活動」に続く。