著者:玄侑宗久
日本人なら知っておきたい仏教は仏教の歴史や現在について客観的に書かれているが、この本はもう少しだけ著者の観点による主観的な解説になっているようだ。
なんだかわかりやすそうだったので読んでみたけどその読みは外れてしまった…。もうひたすら「空」とは何かの繰り返し。繰り返し説明してくれるのだけどパラッと読んだだけではやっぱりよくわからない。また今度本気出して読む。
空というのは自性がないこと。すなわち独立して存在せずに流動的で因果があること。
我々には不完全な感覚機能の脳とで感じる色(感覚)の背後に「空」という全体性の片鱗を感じとるしか方法はない
なんだか読んでると受動意識仮説を思い出した。
「名づけ」についての段落は興味深かった。名づけると概念が際立ち、実存性が高くなるため「空」から遠ざかるそうだ。名づけることというのは、「分ける」ということであり、物と物とを個別に切り離すこと。だから全体性を失ってしまう。
知識を得るというのは同時に何かを失うことでもある。知っているがために、楽しめなかったり、笑えなかったりするようなことがある。知らなすぎても不幸になるが、知りすぎても不幸になる。中庸をとるのが大事ということだろうか。
本の終わりに般若心経の最も重要な呪文を解説する。これは唱えると一切の苦を取り除いて、私が「いのち」の本体になるというなんともすごそうな呪文らしい。で、それも解説してくれるのかと思いきや、結局わからなくても唱えておけば大丈夫なんだよ!という終わり方で最後の最後で納得できない感じだった。
著者はわからないのはわからないままにしておくことも大事だという。でもこれだと方便とかスピリチュアルとかと同じじゃないか。そういうので救われる人もいるけど。僕は自分がわからないことを自分の中に取り入れる勇気はないなぁ…。
俺は何かを失ってでも分かる方を選ぶぜ!